軍事ジャーナリストの田岡俊次さんは2022年12月20日放送の「Arc Times」The Newsに生出演し、「中国が台湾に上陸侵攻するなどありえない」としてその理由を解説しました。
By Arc Times 編集部
上陸侵攻は中国にとって自殺行為
-Q、田岡さんは「台湾有事」という考え方自体に疑問があると言っている。
「軍人はいつもそうだが、危機をあおらないと軍事予算がとれない。日本でも南西諸島と言い始めたのは、ソビエト連邦が崩壊して、北海道に集中していた防衛力が減らされそうになったから、(陸上自衛隊が)なんとか南西諸島という理屈を考え出した。最初は海上自衛隊も『無理してますなあ』と笑っていたくらいだ。ところがよく考えたら、南西諸島の防衛で彼ら海上自衛隊にも予算が付く。それなら乗るか、という話になった」
「だが実際には、中国が台湾に上陸侵攻することは不可能。なぜなら、今中国がどんどん建造して増やしている揚陸艦の輸送能力は、だいたい2万人。第一波として台湾に送れる兵力はそれくらい。一方の台湾は、現役兵だけで陸軍9万4000人、海兵が1万人、訓練済みの予備兵が実際には30万人ほどいるだろう。だから合計でおよそ40万人だ。一方の中国の第一波はどんなにがんばっても2万から3万人。台湾が負けるわけない。しかも台湾は第一波だけ潰せばいい。本来なら第一波が港やなんかを確保して第二波が来るわけだから、第一波が潰されたら中国側はどうしようもない。そう考えると、(台湾への上陸侵攻は)中国にとって自殺行為」
-Q、つまり、軍事的侵攻はかなりあり得ないシナリオだと?
「かなり、ではなく、まったくあり得ない。それをあるかのように日本とアメリカは言っているが、それは軍事予算を取りたいから」
「もし中国が武力を使うとすれば、上陸侵攻ではなく台湾の港湾を攻撃して、商船の出入りや荷揚げをできなくすることかもしれない。台湾の最大の弱点は食糧自給率が31%しかないこと。燃料の自給率も8%くらいしかない」
「ただし、中国は台湾の経済に打撃を与えれば自分も傷つく。中国と台湾はビジネスパートナーのように二人三脚で経済発展してきたわけだから。だから中国はなんとか平和的に統一できないかと思っている」
台湾人の多くは独立など望んでいない
「習近平は2022年10月の党大会で、台湾問題について『未来の平和的統一に向けて』とも言っている。ところが日本の新聞は『武力行使をしないとの約束はできない』という発言だけ取り上げて、平和的統一の部分は報じていない」
「そもそも台湾の人たちは独立など望んでいない。8割以上の人は現状維持が望ましいと言っている」
「一番危険だと思うシナリオは、アメリカが台湾の独立運動をあおり立てて、台湾がその気になること。そうなれば、中国はメンツ上放置できないだろう。ただし(軍事衝突が起きてもそれは)内戦でしかない。1972年の日中共同声明でも言っている通り、台湾は〝中国の一部〟であり、今の中国の政権は〝唯一の合法政府〟なのだから」
Published on 1 / 2 / 2023
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