元文部科学事務次官の前川喜平さんは2023年1月3日放送の「Arc Times」The Newsに出演し、「今心配なのは道徳の教科書に天皇が出てくること」として、学校教育の右傾化が今後さらに進む危険性を指摘しました。
By Arc Times 編集部
政治による教育への支配がどんどん強まっていく
「(2023年は)何が起きてもおかしくない。政治による教育への支配がどんどん強まっていく年になりかねない。私が今心配しているのは、道徳の教科書に天皇が出てくること。その可能性があると思う」
「これは戦後何度となく試みられている。『日本人の道徳の中心には天皇がいる』という考え方で、要するに教育勅語そのものの考え方。例えば戦後間もない1951年、天野貞祐という文部大臣が、いわば国が作る国民道徳である『国民実践要領』というものを作ろうとした。そこには、〝日本国民の道徳の中心は天皇だ〟という考え方があった。それから15年後の1966年、佐藤栄作内閣の時に、(当時の)文部省の審議会である中央教育審議会が『期待される人間像』という答申を出している。この中でやはり、日本人の道徳の最終的な一番大事な徳目は『天皇に対する敬愛の念』を持つことだ、と言っている」
「実は今の学習指導要領でも、社会科の学習指導要領には『天皇に対する敬愛の念を深めるように』と書いてある。それを道徳に持ってきてもおかしくない。このように、『天皇を中心とする国家なんだ』という考え方がどんどん広がっていきそうな懸念がある」
自衛隊の中で国体思想が復活?
「これは危険だな、と思ったのはこの前の(安倍晋三・元首相の)国葬のとき。黙祷の時に自衛隊の音楽隊が演奏した曲『国の鎮め』は、靖国神社を称える曲。それが平気で演奏されている。また、天皇、皇后、上皇、上皇后のお使い(代理人)が拝礼した時に演奏したのは『悠遠なる皇御国(すめらみくに)』という名前の曲で、私は最初、戦前に作られた曲なのかと思った。だが実はつい3、4年前に作られた曲だった。〝悠遠なる〟というのは神代の時代から続いているという意味ですよ。〝皇御国(すめらみくに)〟というのは、神の真祖子孫である天皇が治める日本、という意味。こういう曲を自衛隊の中で作っているわけ。つまり、戦前の『国体思想』がどうも自衛隊の中では復活しているのではないのか、と思われるフシがあるわけで、これが自衛隊にとどまらず、いずれ教育にまで及んでくるのではないかと・・・」
「こういう自衛隊が、これからものすごく力をつけてくる。11兆円の予算規模を持つようになる。はっきり言ってこれは軍隊になっていく。〝陸海空軍その他の戦力〟という、本当は(憲法で)禁じられているはずの軍隊になっていく。こうなると、また独走する軍部というものが日本に復活するのではないか、と」
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